東京家出×写ルンです28
どこへでも行けるという不自由を抱えて心は自分を縛った。
どこへでも旅立てる土地で思い知った閉塞感。
情報が多すぎて、目の前が曇り切った自分には何も理解できなかった。
迷いばかりで行き先が見えないまま彷徨った。
普段の自分が持つツールを手放してもなお、表面上だけでも知っているところを無意識に選んでしまった。
自分でいたくないと言いながらも、自分を守るためにこの場所を選んだのかもしれない。
子どもじゃないんだから、そんなに簡単にすべてを捨てるなんてできるわけない。
胸の奥に重たいものが一つずつ積もっていって前へ進めなくなった。
ぶつかり合った気持ちのエネルギーが衝動的に行動を生み出した。
自分勝手な賭けに出て、その手でつないでいた望みを絶ち切ってしまった。
笑ってごまかすのをやめたかったんだ。
諦めを時間をかけて塗り重ね、静かに終わりを迎えたい。
どこにも属せない孤独をずっと抱えてこれからも生きていくのだろう。
家出をして、改めて自分という人間の狭さと醜さを思い知った。
この先、どこへ行っても心の底から楽しむことは、もうできない気がしていた。
出来上がった写真を見て、目に見えたもの、心に映った色が見事にフィルムに刻まれていることに驚いた。
やっぱり、旅と写真はやめられそうにない。
-東京家出×写ルンです 了-
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