東京家出×写ルンです06
広く長い高架下を歩いているうちに、この風景を切り取りたい、という気持ちが湧いてきた。
それはもう、普段の生活の中で当たり前のように行いすぎていて、脳に焼き付いた癖のようなものだ。
やっぱり写真撮りたいな。
家出してきた人間に記録なんて必要ないはずなのに、目で見たものを残したいという欲はあるらしい。
とはいえ、最小限の荷物で出てきたんです私。
カメラなんてもちろん持ってきていないです、はい。
そうだ、コンビニで、「写ルンです」を探そう。
目に入ったコンビニにとりあえず入る。
不思議なことになくなりそうでまだなくならないもので、ちゃんと「写ルンです」はいる。
今でもコンビニに置いてある「写ルンです」が、こんなにありがたい存在だと思ったことは生まれて初めてだ、きっと。
……1000円ちょっとか。
財布の中身を再び見てみる。
……今は1000円すら厳しい。
そっと買うのを諦めた。
でも、ちょっとだけ気持ちが別のところに向いて明るい気持ちになる。
写真が撮れないなら自分の心に焼き付ければいいじゃない。
気になる場所で何度か立ち止まる。
忘れられない駅の風景が増えた。
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